足関節捻挫
捻挫とは靱帯損傷のことであり、足関節捻挫はスポーツによる急性外傷として最も頻度が高い疾患です。
足関節は外側は前脛腓靭帯、前距腓靱帯、踵腓靱帯、後距腓靱帯で囲まれており、内側は三角靱帯という強い靱帯で守られています。
足関節は外反より内反方向に可動性が高い関節で、多くの場合が外側の靭帯が損傷する内反捻挫です。滑ったり、足の上に乗ったりすると、急激な内反が強制され、外側にある靭帯が断裂します。足関節の内反捻挫で損傷する靭帯は、主に前距腓靭帯と踵腓靭帯であります。
バレーボールやバスケットボール競技で特に多く発生します。ジャンプの着地時に人の足の上に乗り内反が強制されて起こる場合、重症になることが多いです。サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールなどにみられる接触プレーをはじめ、野球のスライディング、体操競技、テニスにも多く発生します。
診断
捻挫の診断は足関節の圧痛、前方引き出しによる足関節の動揺性の左右差をみます。レントゲンチェックによる骨折の有無判定や、古い骨片の存在の確認を行います。
当院では即座にエコー検査を行い、靭帯断裂の損傷程度、走行異常や肥厚像、出血などをチェックします。重度の場合距骨軟骨損傷を伴う場合もあり、治療が長期に渡り手術を要することもあるためMRI検査を施行します。
捻挫は重症の程度によりⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度に分けられます。Ⅰ度は前距腓靭帯の部分断裂、Ⅱ度は前距腓靭帯の完全断裂、Ⅲ度は前距腓靭帯、踵腓靭帯の完全断裂と定義されます。
それぞれ治療方法、治療期間に違いがありますので、断裂靭帯の程度を確認することはたいへん重要です。
治療
急性期では受傷部位を確認、Ⅰ度とⅡ度の捻挫では、まずRICE処置(Rest安静、Ice冷却、Compression圧迫、Elevation挙上)を行います。
当院では即座にテーピングとサポーターによる固定を行います。
Ⅲ度の捻挫ではRICE処置を行い、ギプスや装具で2~3週間固定する必要があります。まれに手術が必要になることもあります。
その後リハビリテーションを開始しますが、きちんと行わないと捻挫を繰り返したり、足関節の痛みなどの後遺症を残すことがあります。
リハビリテーションは3つの段階に分けられます。第1段階は前述のRICE処置、第2段階は硬くなった足関節を柔らかくし、筋力を取り戻す、第3段階でバランス訓練や、実践的なトレーニングを施行します。
スポーツ復帰までのリハビリテーションでは足関節の可動域制限をきたすため、アキレス腱のストレッチングやタオルギャザー、足関節の内外返し訓練、バランスボードでの訓練が大切です。また、底背屈運動を可能にして内反運動の制限が要求されるため、競技復帰に際しては、テーピングや足関節サポーターが用いられることもあります。
当院では捻挫の経過観察にもエコーを用い、回復の程度を観察し治療の指標にしています。
足関節捻挫は軽視され慢性化する場合が多いので注意が必要です。歩行に際して足関節に強い痛み感じるようならば、整形外科を受診しましょう。