腰椎分離症
腰椎の中で一番下にある第5腰椎に好発する疲労骨折で、背中を反らす動作やジャンプ時の着地動作を繰り返すことで、腰椎の後方の関節突起部にヒビが入り疲労骨折を生じている状態です。
野球、サッカー、バレーボール、バスケットボール、ラグビー、柔道など、身体の前後屈や腰のひねり、ジャンプからの着地といった動作を繰り返すスポーツで、過度な練習が原因となるケースが多いです。
成長期では骨の構造が弱いため10〜15歳の男児に多く、一般人の約5%、スポーツ選手では30〜40%が分離症を起こしているといわれています。ただし練習し過ぎると必ず発症するわけではなく、体質的な要因も影響すると考えられており、まれに先天的な原因で発症する場合もあります。
検査・診断
はじめは運動時の腰痛という形で症状が出ます。運動の時には痛いけれど、普段はなんともないといった程度で運動を続けていくことも可能です。背中を反らす動作で腰痛が増すのが特徴で、しばしば前かがみで手が床につかなくなります。
X線検査を行い腰椎の分離の有無と程度を調べますが、早期ではX線検査でははっきり確認できない場合が多く、CT検査とMRI検査を行います。
治療・予防
治療はまずはスポーツ活動を中止し保存的療法を行います。
分離症の起こり始めの段階では骨のヒビは治ります。治る可能性がある場合は、安静を保って骨がくっつくのを待ちます。その間は硬いプラスチック製のコルセットを装用するなどして、患部に負担がかからないようにします。痛みに対しては痛み止めを使ったりもしますが、筋のバランスをとるために腹筋や背筋の筋力トレーニングを行ったり、大腿部の筋肉のストレッチングを行うことはたいへん重要です。
当院では少しでも早期に骨癒合を促すため超音波骨折治療器LIPUSを用い骨癒合を早める治療も行っています。
骨のつく見込みがなくなった分離症は強い痛みがおさまり次第、腰痛をコントロールしながらスポーツに復帰する事になります。
誤解があるようですが、成人の腰椎分離症の多くは無症状で、必ずしも一生腰痛に悩まされる訳ではありません。
保存的療法では効果が得られず、長期間痛みが続いたり、分離した腰椎がずれてすべり症に進行し神経が圧迫されるような症状が出たりする場合などには、手術による治療が検討されます。
治療後の注意
再発防止のため筋力トレーニングやストレッチなどの運動を行うことはたいへん重要です。具体的には、腰椎の負担を軽減する働きがある腹筋と背筋を鍛えることが推奨されます。また、股関節が固いと身体をひねったときの腰への負荷が大きくなるので、太ももの筋肉も含めた股関節周辺のストレッチも有効です。